イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団はイスラエルの主要なオーケストラで、世界有数のオーケストラの一つである。イスラエル建国後も頻繁に戦火の脅威にさらされながら、世界トップの演奏レベルを保ち続け、特に弦楽セクションの素晴らしさは“世界一の弦”と称されるほどである。
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団は1936年に、ポーランド生まれのユダヤ系ヴァイオリニストブロニスワフ・フーベルマンが私財を投じてテルアヴィヴに創立した。ヨーロッパ各地でナチズムから逃れたユダヤ系の優秀な音楽家が結集して1936年に創設された。当初の名称はパレスチナ管弦楽団であった。お披露目の演奏会は、同年12月26日にテル=アヴィヴにおいて、アルトゥーロ・トスカニーニの指揮によって行われた。
頻繁な演奏旅行や録音の機会に恵まれ、しばしば首席指揮者に世界的な大指揮者を迎えてきたが主にユダヤ系が多い。とりわけ、レナード・バーンスタインやズービン・メータとゆかりが深い。バーンスタインと密接な関係を結びんだ1947年のシーズンからクーセヴィツキー、ミトロプーロス、マルケヴィチ、ラインスドルフ等が次々と客演。1948年はイスラエル共和国の建国と共にイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団と改称される。メータは1968年から終身音楽監督を務めている。
バイエルン国立歌劇場の音楽監督やフィレンツェ五月音楽祭の主席指揮者などを歴任する世界屈指のマエストロとの共演歴は45年を数える。また民族紛争で窮地に陥ったイスラエル・フィルのもとに、メータが駆けつけて演奏会を率いたことも多々あり、そんな両者が奏でる崇高な響きは、我々の魂の渇きを潤してくれる“平和への祈り”のような音楽である。
主なレパートリーは、ベートーヴェン、モーツァルト、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、マーラー等であるが、シェーンベルクのロマン派時代の作品もレパートリーに入っている。ユダヤ人演奏家に弦楽器奏者が多いことから、バッハ以降のヴァイオリン協奏曲もレパートリーに入っている。一方、ワーグナーはその反ユダヤ主義的言質やナチス・ドイツの文化的象徴ゆえに、またヒャルト・シュトラウスはドイツ第三帝国の御用文化人を勤めたなどにより事実上タブー視されている。
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