世間にはいろいろな奏者泣かせの曲がありますが、この超有名な「新世界交響曲」もその一つでしょう。オーケストラのテューバ奏者業界では説明不要の出番が少ない曲なのです。この「新世界交響曲」は、シンバルがたった一発しか入っていないという有名な曲でもありますが、テューバ奏者の出番も第2楽章のたった9小節しかない、テューバ奏者にとってはあまりにも嬉しすぎるような哀しい曲なのです。しかもそのメロディはトロンボーンの3rdとまったく音符が一緒という、ふんだりけったりのむごい仕打ち。もしかしたらドヴォルザークのテューバいじめとも・・・・。 しかして、その理由と考えられているのは、ドヴォルザークの故郷であるチェコとアメリカとでは、新世界を作曲した当時、使用していたトロンボーンでは音域が足りず演奏できなかったため、この9小節だけスコアに小さくテューバと書いてあったのがそのまま出版されてしまったようです。 アマチュアのオーケストラではテューバの代わりにコントラバストロンボーンで吹くところもあるとかいう、この9小節も、プロのテューバ奏者にとっては、いかにこの9小節を最高の音で演奏するかに命をかけています。おまけにこの第2楽章の最初と最後のコラールはppで入らなければならず、しかも最も出しにくい音だといいます。今度「新世界交響曲」を聴く時にはじっと息を潜めて機会をうかがう、チューバ奏者の姿を注目するのも楽しみの一つに加えたらいかかでしょうか。