オーケストラが地方の演奏旅行などにいくと、オーケストラの楽屋の扉に「楽団控室」と書いてあることがあります。オーケストラは日本語で交響楽団ですので、楽団には違いないのですが、実は全員なんとなく抵抗を感じてしまいます。書き直してもらうほどのことでもなく、間違いではないので、そのままにしておくのですが・・何とも居心地の悪さがあるようです。 タレントの世界でも、やはり張り紙に「芸人控室」と書いたらだれもその部屋に入らず、「芸能人」と書きなおしたら入ったという、うそのような話もあるそうで、オーケストラの団員も「楽団員」または「楽員」と書いてくれたらすんなり入れるようです。 「楽団」というとなぜか歌謡曲の伴奏楽団というニュアンスになるようで、特にそちらを低くみていて区別するというのではなくても、やはりオーケストラはシンフォニーだという意識をみんながもっているからでしょう。 それでは、オーケストラの団員たちは、自分たちをなんと呼んでいるかというと、ある意味ではもっともガラクタバンド的イメージの「ガクタイ」とか「ガクタイヤ」などと言っています。また「ラッパフキ」や「フエフキ」とか言ったりもします。 新聞記者や映画監督が「ブンヤ」とか「カツドウヤ」と、ヤクザっぽいカッコよさ志向の呼び方をして嬉しがると同じように、このガクタイヤという呼び方も、自分に対する蔑称ではなく、多少の押し売り的な謙虚さを持った呼称であり、自分はプロだという誇りがあるからこそ、胸をはってそう言っているということでしょう。 しかし、この「ガクタイ」とか「ラッパフキ」という呼び名も、部外者に言われるとやはり傷つくわけですから、この辺が日本語のむずかしいところです。