ムックリはアイヌの代表的な楽器で、世界各地に分布する「口琴」とよばれる楽器の一種です。古来よりカムイ(神)の宿る自然を尊び共存してきたアイヌ民族。自然との交感を導くムックリは、雨だれや鳥の鳴き声といった自然界の情景を音で描写するアイヌ精神そのものです。
ムックリは長さが15cm、幅が1.5cmほどの竹製で、両端のひもで楽器本体を保持しながら、右側のひもを強く引き、内側の舌を振動させることで音を出します。振動音はそのままでは小さい音量ですが、これを口腔内で共鳴させることで音量を高めます。音程はほとんど一つの音高から変わらないため、舌の動きや口の開閉、呼吸法で音色を変え、強弱をつけ、雨だれや鳥の鳴き声といった自然界の情景を音で描写します。奏者によって音色は千差万別。音を聞くだけで誰が演奏しているのかがすぐに分かるといいます。
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