オーケストラの給与体系は大きくわけて3つの形があります。
1.完全固定給与制での支払い。
2.ある程度の基本給があって、その上に演奏会の数や時間によって歩合で上乗せしていく。
3.演奏会や録音などの収入があったとき歩合制で払う。
日本のプロ・オーケストラでは完全固定給制が多いようです。オーケストラには様々な楽器があり、ハープやテューバなどのように乗り番が少ない楽器でも、正団員であるかぎりは年齢によって多少の違いはありますが、基本的に給与は均等になっています。
各楽器の首席奏者には、それぞれに給与の5〜10%程度の首席手当てがつくようです。また日本のオーケストラのほとんどが、終身雇用制をとっています。退職の際には退職金あるいは慰労金が受けられるようになっていますが、その金額は、一般の企業に比べるとかなり低いのが現状です。現在では定年は60歳というのが一般的です。
楽団員の平均年収トップはN響の1000万円
N響の終身正指揮者、アンサンブル金沢音楽監督などを務める岩城宏之氏は「いいサウンドはお金の音」と言う。高い給与で優秀な楽団員を集め、最高の指揮者やソリストを呼んでこそ、いい音を出せるということだろう。それだけオーケストラの活動には資金がかかる。
オーケストラの活動は定期演奏会のほか依頼を受けての公演、学校の音楽教育のための演奏会などで、年間100回から150回くらいの演奏会をこなす。主体になるのは自主公演の定期演奏会だが、ホールの借り代だけでも一晩150万円〜250万円のほか、楽器の購入、維持費、広告費、公演チラシなどの印刷代、楽譜代などがかかる。
それ以上に負担が大きいのが楽団員の給与。日本の楽団員の生活が楽でないのは定評があり、アルバイトをしている人も多いが、楽団のほとんどは終身雇用制だから50人、100人を抱えるとなれば人件費は馬鹿にならない。日本音楽家ユニオン2003年調査によれば、最高額はN響の年額1000万円(45.3歳)、続いて読売日響767万円(43.6歳)、都響733万円(45.5歳)と御三家がトップに並ぶ。低いほうは関西フィルの220万円(特別契約などを除く、40.9歳)、山形交響楽団の383万円(38.2歳)などだが、400万〜500万円台が一般のようだ。
一方、収入はとなると、ほとんど演奏会収入に限られる。それも両チーム合わせて50人程度の選手で最大5万人の観客を相手にするプロ野球などと違って、オーケストラの場合、少なくても50〜60人、多ければ100人を超す楽団が演奏を聴かせるのは、せいぜい1000人から2000人。桁違いに効率が悪く、定期演奏会のたびに数百万円の赤字が出るのが実情という。
終身雇用制から能力主義へ移行した東京都交響楽団
このため台所事情は火の車で、とくに近年は長引いた不況が加わって経営母体からの財政援助も細りがち。安泰と見られた自治体支援の楽団も補助金削減が相次いでいる。札幌交響楽団は平均50万円の賞与カットに続いて本給の7%、退職金25%を削減、名古屋フィルも愛知県、名古屋市の双方からの助成金が削減され、神奈川フィルも一時金カット、給与の削減が続いているという。
そして御三家の一角、東京都交響楽団では、この5月から終身雇用制に代わって契約楽員制度(3年間)を採用、能力・業績評価による年俸制に移行することになった。契約楽員制はアンサンブル金沢が一昨年に導入しているが、能力・業績評価を取り入れるのは初めてのケースという。
石原都知事が就任以来進めてきた財政再建策の一環で、楽団への補助金3割削減、楽団定員の90人への削減などに続く措置。このため都響の楽団員は5月にいったん退職し、首席・副首席奏者は全員契約楽員に、他の奏者は契約楽員になるか終身雇用かを選択することになる。年俸制の本給は終身の場合、契約より120万円〜70万円低く設定されており、40歳で契約楽員なら670万円、終身では600万円になる。
(数字や記録などは2005年4月現在のものです)
「オーケストラ」のカネと人事より
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