平均律や純正律という言葉を聞いたことがありますか。ともに音楽の音階(ドレミ・・)を構成している規則です。平均律は1オクターブの14の半音が全て等間隔になるように音程が並べてあるものです。現代の音楽のほとんどはこの平均律を用いており、ピアノも平均率で調整されています。しかし、この平均律という音列は訓練された耳を持つ人には、「和音が少しずつ濁っている」ように感じられます。
それに対して純正律はドミソの和音が美しいのが特徴です。ただし主要3和音以外の3和音の響きはあまり美しくありません。また、何よりも西洋音楽の最大の特徴である転調をする場合、不協和音だらけになってしまうという欠点があります。(平均律と純正律の仕組みはこちらを参照)
ここからが本題です。
ヴァイオリンに代表される弦楽器は、ギターのようなフレットがないために、自分で正しい音をつくらなければなりません。いいかえると、正確な音程をとれるようになるには大変苦労するかわりに、微妙な音程の調整は自由自在というわけです。ヴァイオリンの調弦は、最初にA線の音を合わせ、それから隣あう線(低い方からG線、D線、A線、E線)どうしの響きを聴きながら完全五度(純正律)に合わせていきます。ヴァイオリン奏者は純正律の和音を聞き分けることができるようにならないと一人前とは言われません。
では、平均率で調整してあるピアノと一緒に演奏するときなどはどうするのでしょう。当然、普通に演奏したのでは合わない状態です。しかしながら、ヴァイオリンの音程は弓の重さのバランスなどでかなり変わるそうで、純正律の調弦でも実際に開放弦の五度を弾くときには、無意識に正しい音程になるように右手で修正することができるとのことです。
また、音階の「ドレミファ・・・」の「シ」の音は導音と呼ばれていますが、どの調でも導音は高めにとった方が綺麗に聴こえます。さらに、コンチェルトなどで、わざと音程を少し高めにとって、オーケストラに沈んでしまわないようにする(自分の音を際立たせようとする)ヴァイオリニストもいます。これらには、確かな耳があることが前提になりますが、これがヴァイオリンの素晴らしさであり不思議さでもあるのです。
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