第2ヴァイオリンは面白い!
第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンって楽器が違うの?と、実は私もそう思っていたことがありました。オーケストラには大勢のヴァイオリン奏者がいますが、第2ヴァイオリンは通常は第1ヴァイオリンの陰にかくれるように客席からは見にくいところに座っています。もちろん第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの楽器は同じです。ではどうしてヴァイオリンが2つに分かれているかというと、和声は4つの声部で成り立っていますが、これをヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3種類の楽器で受け持たせるために、ヴァイオリンを2パートに分けているようです。 通常は、第1ヴァイオリンの方が第2ヴァイオリンよりも高い音を受け持ちますが、必ずしも第1ヴァイオリンが旋律で第2ヴァイオリンが伴奏と決まっている訳ではありません。それぞれの音の使い分けはオーケストレーションに委ねられるものです。 面白いのはこの第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンでは役目が違うばかりではなく、必要な資質が異なることだそうです。 「第1は音の華やかさ、派手な技巧を求められ、第2は音程の正確さ、順応性が何よりも大事である。つまり第1が王様なら第2は忠実な家来的な位置にいます。それが弾き方にも表れてくるわけで、第1の人に気兼ねして弾いているのであろう。すると、立ち居振る舞いにも変化が表れる。まず女性だが、一概に地味な服装で、基礎化粧品のみという人が多い。第1は直接お客の目に触れるので、服に規定のある場合でも、黒レースだったり裾にビーズがついていたりするデザインを選び、口紅は当然のこと、マスカラまでしっかり塗る。それが第2だと、そのまま歩いて帰れるような服や、どうせ腕や楽器で隠れるからといってTシャツで舞台に出てしまう人さえいる。男性はもともと人数が少ないものだが、無精ヒゲを伸ばしっ放しにして、そのうちそれが売り物になったりするのだ。実は学生時代には、誰もが両方のパートを経験するものである。授業などでは本日の分担が決まっていて、更に曲によっても替わったりする。だからどちらでも弾けるようなものだが、やはりその人の持つ個性がはっきり分かれるものらしい。 (2012年4月24日 読売新聞、青島広志のコラムより) NHK交響楽団の第2ヴァイオリン奏者、大林修子さんによると「第1ヴァイオリンにいる時には分らなかった面白さがあります。たとえば、その和声構成音にはないメロディーを第1ヴァイオリンが奏でているとき、第2ヴァイオリンはどのようにその和音を響かせるか、また、和音の変わり目での第2ヴァイオリンの響きが一瞬にして全体の雰囲気を変化させたり、長三和音の第3音をほんの少〜し低くして微妙なニュアンスを作り出したり、束の間主旋律に顔を出したかと思うとふいっと隠れたり、100人余りの人間が1つのものを作っているわけで、うまく行ったときの喜びはひとしおだそうです。(NHK交響楽団楽員インタビューより) ちなみに、オットークレンペラーは、第2ヴァオリンのほうにむしろ名手をそろえた・・・。また、ウィーンフィルなども第2ヴァイオリンにベテランで、音楽性の高い人が多いとのことです。